ブロックチェーンを活用した新しい組織として、「DAO」があります。DAOを簡潔に説明すると、「ブロックチェーン上で物事を決定し、特定の目標達成を目指して行動する組織」です。
このDAOは「会社の未来の姿」として近年注目を集め、今後の成長を望まれています。では、DAOは従来の会社と何が異なるのでしょうか?どのように活用されているのでしょうか?本記事では、DAOの概要を説明します。
Contents
DAOとスマートコントラクトの仕組み
DAOは「分散型自律組織」の略称で、スマートコントラクトのルールに従いブロックチェーン上で活動します。スマートコントラクトは前もって設定した条件が満たされた時、決まった処理が自動で実行される仕組みです。DAOはこの仕組みを採用しており、業務において自動で契約や取引を履行しています。
この処理の自動化によって時間や費用などのコストを削減でき、活動の効率化が可能です。またDAOはブロックチェーンの仕組みを基盤としているため、情報や資産を第三者不要かつ改ざんできない状態で管理しています。契約や取引の内容はブロックチェーンに記録されます。
DAOと一般的な会社との違い
1.管理者の不在
一般的な会社では組織内に管理者が存在し、管理者が主体になって組織の方針を決めます。したがって上層部以外の人間が直接組織の意思決定に参加できないケースが多く見られます。
一方でDAOでは会社における管理者が存在せず、DAO内のステークホルダー(利害関係者)同士で組織の方針を決定します。この意思決定に参加するには「ガバナンストークン」が必要で、トークンを組織への提案、意思決定に対する投票に使用します。DAOは分散性を持つ非中央集権的な組織であるため、参加者個人にとって優れたアイデアを持つ人物が、立場に関係なく組織に貢献できる機会を増やすことができます。
2.透明性の高さ
一般的な会社では業務内容や資本金、所在地などは確認できても、その組織の方針、将来的な計画全てを誰でも閲覧することは困難です。
一方DAOはブロックチェーンの仕組みを活用しているため、記録された情報は誰でもいつでも閲覧することができます。スマートコントラクトで実行される処理についても同様に、ソースコードを閲覧することができるため改ざんが起きにくく、仮に不正が発覚しても短時間で容易に発見できます。これはDAOの参加者でなくても閲覧でき、一部の人物が組織において得をする行動を防ぐことが可能です。
3.組織への参加の容易さ
一般的な会社では履歴書の提出や入社面接が必要になり、時間的なコストが多くかかります。入社が確定しても手続きが必要です。
DAOでは、活動内容に関心を持った組織があれば、その組織のガバナンストークンを購入することでDAOの参加者になることができます。インターネットに接続する環境さえ整っていれば、ガバナンストークンは取引所で購入でき自身のウォレットで保管できます。DAOのガバナンストークンを所有することで、国内外問わず様々なDAOに参加できるのです。
DAOの活用例
1.MakerDAO
MakerDAOはステーブルコインの「Dai」を発行し、DeFi(分散型金融)サービスを提供するプロジェクトです。
Daiは複数の暗号資産を担保としているため価格変動が小さく、ビットコインと比較しても短時間、低コストで送金や決済ができます。Daiの持つ通貨安定性は大きいため、法定通貨のインフレが激しいラテンアメリカ諸国に住む人々の人気を集めました。
DeFiは、ブロックチェーンの仕組みを様々な金融サービスに活用するプロジェクトです。銀行といった管理者が存在しないため、インターネット環境が整っていれば、時間や場所を問わず送金等のサービスが利用可能で、手数料も小さい点がメリットです。
MakerDAOのガバナンストークンは「MKR」を用いており、これを所有することでMakerDAOの意思決定に参加できます。
2.和組DAO
和組DAOは「日本がWeb3で世界の先頭に立つ」ことを目指して、Web3全般の情報を共有、議論するコミュニティです。discordでは定期的に勉強会やAMA(質問会)が開催されており、Web3に精通した起業家、投資家とも交流できます。
勉強会以外にも、discord上では参加者同士がわからない事を質問することができ、初心者でも親しみやすい環境が整っています。和組DAOのガバナンストークンは「Wagumi Cats NFT」を用いています。
3.Ninja DAO
Ninja DAOは「CryptNinja NFT」を応援するコミュニティです。DAOの参加者はNFTの作成者を応援したり、自らイラストや漫画の二次創作をして作品を販売することができます。従来であれば二次創作の作品を販売することは著作権の都合上できませんでしたが、二次創作の作品をキャラクター権利元の公式へ申請し、手続きを経ることで収益を出すことが可能です。
また、NFTの購入方法、作成方法でわからない事があれば、discordで質問できます。Ninja DAOのガバナンストークンは配布イベントに参加することで入手できます。(2022年3月現在配布停止中)
DAOの活況と課題
NFTの流行やDeFiの有用性の高まり、そして組織としての革新性から、DAOは世界中で注目を集めました。海外のDAOには投資家からの評価を集め多額の資金調達に成功した実例もあり、一般的な会社では達成が難しい成果を出しているDAOも存在します。
その一方でDAOには改善が必要な課題も存在します。例えばハッキング被害に遭い暗号資産が流出してしまうと、参加者に多額の損失が生じる危険性があります。2016年にイーサリアムのプラットフォーム上の組織「The DAO」がハッキングを受けた際、約360ETHが盗まれ約52億円もの損失が発生しました。DAOに関係する法律は日本を含め十分に整っていない国が多く、DAOで生じる損失に対して十分な補償を受けられない可能性があります。
まとめ
本記事では、DAOの特徴を会社と比較して解説し、国内外のDAOを紹介しました。改めてDAOの特徴を以下にまとめています。
- DAOはスマートコントラクトを活用し、自動で処理を実行する
- 管理者が存在せず、DAO参加者同士で組織の意思決定を行う
- 透明性が高く、インターネット回線が整っていれば簡単に参加できる
- 金融からアート作品、情報共有の場まで、幅広い分野で活用されている
- DAOにはハッキング、法律面の問題があり、参加する際には注意が必要である
今回取り上げたDAOは、今後の組織としての需要が期待でき、注目を集め続ける事が予想されます。関心を持ったDAOがあれば、ぜひ挑戦してください。