皆さんは、日本発のブロックチェーンプロジェクト「Astar Network(アスターネットワーク)」を知っていますか?
ビットコインやイーサリアムに代表される暗号資産はすべて、ブロックチェーンという仕組で動いていることは皆さんもご存知だと思います。実は日本人が手がけるブロックチェーンプロジェクトもあります。それが「Astar Network」です。
この記事ではAstar Networkの特徴について解説します。
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Astar Networkとは
Astar Networkは、渡辺創太氏が代表を務めるStakeTechnologies社(ステイクテクノロジーズ)が開発を進めているパブリックブロックチェーンです。その特徴は大きく分けて2つあります。
1つ目はブロックチェーンを活用したサービスを開発するための機能が充実しているということです。ここで言うサービスとは、DeFiや決済、ゲームなどスマートコントラクトによって提供されるサービスのことを言います。
Astar Networkはイーサリアムのようにスマートコントラクトが実装でき、ブロックチェーン上でバーチャルマシンの環境を提供しています。
ではイーサリアムとの違いは何なのでしょうか。
これについて詳しい内容は後述しますが、大まかにいうと有益なサービスを生み出せる開発者にやさしく、さらに開発しやすい環境が提供されていることです。開発者にやさしく、開発がしやすいということは、ユーザーにとって有益なサービスが生まれやすいと考えることもでき、結果としてAstar Networkはユーザー志向のプロジェクトととらえることもできるでしょう。
2つ目の特徴はAstar NetworkはPolkadotのパラチェーン接続を目指したプロジェクトであるということです。
Polkadotはブロックチェーンの相互運用性(インターオペラビリティ)を目指すプロジェクトです。これに関しても詳しくは後述しますが、ブロックチェーンのインターオペラビリティとはブロックチェーン同士をつないで運用できるということを意味します。
現在は違うブロックチェーン同士において暗号資産を交換したり、情報のやり取りを直接行う事は難しいと言われています。Polkadotはまだ本格運用は始まっていませんが、メインチェーンとなるリレーチェーンに接続しているブロックチェーン(パラチェーン)同士で情報のやり取りができるようになり、コンピューター同士をつなぐネットワークハブのような役割を持ちます。
Polkadotのパラチェーンとして接続できるブロックチェーンは合計100個で、Astar NetworkはPolkadotのパラチェーンの1つになることを目指しています。
実はPolkadotのリレーチェーンはスマートコントラクトを実装できません。そのためAstar Networkは、Polkadotネットワーク内にスマートコントラクトを実装する役割を担う存在になると言えるでしょう。
Astar Networkの特徴
スマートコントラクトを実装していてPolkadotへのパラチェーン接続を目指す、日本発のブロックチェーンプロジェクトAstar Networkの特徴について説明します。
Substrateをもとに作られている
Astar NetworkはSubstrateというフレームワークをもとに作られています。SubstrateはParity Technologies社が開発をしている「カスタマイズに優れたブロックチェーン開発キット」です。
Substrateをもう少しわかりやすく説明するために建物の設計で例えます。
建物を建てるときに、きちんと住める建物を1から設計するのはとても大変です。まず最低限の建物としての条件を満たすために、風や地震に耐え、雨漏りもしないように柱の太さ、本数、位置などを考えるところから始めなければいけません。もし、基本的な建物としての機能を満たせる「基本の建物」の設計図がオープンソースとしてあったら、1から建物を設計せずとも、その設計図をもとに建物を建てることができます。
またその設計図をカスタマイズすることで設計者は個性のある建物も作れます。ブロックチェーンも1から設計するのはコストがかかると言われています。
Substrateはこのように「きちんと機能するブロックチェーン」を1から設計せずとも作ることができるオープンソースのフレームワークです。もちろん自分なりのカスタマイズが可能となっています。
Astar NetworkはこのSubstrateをベースに設計されているブロックチェーンです。実は前述したPolkadotもこのSubstrateのフレームワークで作られています。
きちんとしたブロックチェーンを効率よく設計できるフレームワークのSubstrateですが、実はSubstrateで作られたブロックチェーンはPolkadotのパラチェーンとして簡単に接続ができるようになっています。
もちろん、Polkadotと接続されていなくてもAstar Network単独でブロックチェーンとして機能します。実際に現在はまだPolkadotのパラチェーンの募集は始まっていないのでAstar Networkは単独で機能している状態です。
Polkadotとのパラチェーン接続を目指している
Astar NetworkはPolkadotのパラチェーンとして接続することを目指したプロジェクトです。ではPolkadotに接続するメリットはいったい何なのでしょうか。
Polkadotに接続することでブロックチェーンのインターオペラビリティが可能になり、パラチェーン同士で相互に情報のやり取りを直接できるようになるということは前述のとおりです。
もう一つメリットは、Polkadotのパラチェーンはリレーチェーンのセキュリティを共有することができるということにあります。一般にプライベートチェーンでは1つ1つのトランザクションを分散されたノードによって検証と記録の作業を行うことで、耐改ざん性と非中央集権性を保っています。
分散されたノードの数が多いほど攻撃に強く、悪意のあるノードが大多数を締める可能性が低くなり、改ざんに強くなります。ブロックチェーンがうまく機能するためには、ある程度の規模の分散されたノードが必要なのです。
もし、有用なプロジェクトがあったとしても、参加する人数が少ないとその規模は小さく耐改ざん性が低いままです。これでは短期間で人を集めることができる広告戦略にたけたプロジェクトでなければ生き残れないということも起こりえます。
Polkadotのパラチェーンになるとリレーチェーンのトランザクションの検証と記録の作業に参加することになります。
単一のプロジェクトとしては規模が小さくても、リレーチェーンとその他のパラチェーンを合わせ分散されたノードの規模を共有することで、高い耐改ざん性を得ることができるようになるのです。
先ほどSubstrateはブロックチェーンという建物の設計図という例え方をしましたが、この建物を店舗とするとPolkadotは商店街という感じです。Polkadot商店街は、自治会により日々の商店街の取引の処理と商店街内の治安を守るための警備がされて、Substrateをもとに設計した店舗であれば簡単に参加することができるのです。
商店街に参加した店舗は自らを守るために独自に警備システムを持たなくても商店街の自治会に守ってもらえます。さらに商店街に参加している店舗同士でポイントのやり取りなどの情報のやり取りができるという感じです。
従来インターオペラビリティを実現するためには、各ブロックチェーンプロジェクトが1からスマートコントラクトを作成し、接続方法を構築する必要がありました。
Polkadotでは、パラチェーンになることで簡単にインターオペラビリティを実現できます。Polkadot自体が、異なるブロックチェーンの特徴を組み合わせて機能することが前提として作られているのです。
Astar NetworkはこのPolkadotエコシステムへの接続を目指しています。つまりPolkadotエコシステムの分散性やスケーラビリティ、参加プロジェクト同士でのインターオペイラビリティなどの相乗効果を得ることができる可能性があるプロジェクトといえます。
実はPolkadotのテストネットに世界で初めて接続成功したのもAstar Networkなのです。
スマートコントラクトをサポートしている
Astar NetworkはEthereumのようにスマートコントラクトを実装できる機能を有しています。
実はPolkadotのリレーチェーン自体はスマートコントラクトをサポートしていません。リレーチェーンは全体のシステムを調整する役目だけを担っており、最低限の機能しか有していません。細かい機能はパラチェーンに任せているということです。
つまりAstar NetworkがPolkadotに接続することで、Polkadotエコシステムでスマートコントラクトが使えるようになるのです。
Astar NetworkはPolkadotエコシステムにEthereumと同じ機能を実装するプロジェクトということです。さらにスマートコントラクトの動作する仕組みとして、Ethereumと互換性があるようにEVMとWASMをサポートしています。
これによりEthereumで開発していたスマートコントラクトをAstar Network上にデプロイするときに、わざわざ作り直さなくても容易に移行することができ、アプリ開発者としては参入しやすい特徴の1つと言えます。
アプリ開発者にやさしい仕組みDApps Staking
アプリケーションを利用するのはユーザーです。当然、アプリ開発者がユーザーに対して利便性の良いサービスを作ることができれば、それはユーザーのためになります。
Astar Networkはユーザーに対して有用なアプリを開発できるよう開発者にやさしい仕組があります。これは、Astar Network自体がユーザー思考であるともいえるかもしれません。
その開発者に優しい仕組みであるDApps Stakingについて説明します。
DApps Stakingとは、ユーザーがスマートコントラクト自体にステーキングする事ができる仕組みです。この時ステーキングを行ったユーザーをNominatorといい、スマートコントラクトの管理者をOperatorといいます。
Operatorはステーキングされた割合に応じて報酬を得ることができるようになっているのです。またNominatorもステーキングをした量に応じた報酬を受け取ることができます。
従来は、開発者がスマートコントラクトを作るときに、何らかの手数料を得たり、課金で報酬を得ることができる収益モデルを考えなければいけませんでした。
しかし、DApps Stakingという仕組みがあることにより、Astar Networkの価値を向上させるようなスマートコントラクトを作成する事に集中するだけで報酬を得ることができるようになるのです。
またステーキング以外にも、Nominatorにはスマートコントラクトに対してgoodとbadを投票する権利が与えらます。badがgoodを上回ったり、goodに対してある一定割合以上の数のbadが投票されるとOperatorがペナルティを受けるような仕組みも用意されています。
これらの仕組みがOperatorに対して、悪意のあるスマートコントラクトや一定期間稼働しない無意味なスマートコントラクトよりも善意のスマートコントラクトを制作するインセンティブを与えているといえます。
さらに興味深い仕組みが、まだデプロイしたてで認知度が低くステーキングを集められていないスマートコントラクトに対して、先行的にステーキングを行ったNominatorに対するオプションです。
もし先行的にステーキングをしたスマートコントラクトがその後に多くのステーキングを得られた場合、先行者Nominatorは通常よりも多い報酬を受け取る権利を行使できます。デビューしたてでまだ知名度が低い、アイドルを初期のころから応援して支えるファンに対して報酬が用意されているような感じです。
これによりNominatorに対して、デプロイしたてでまだ知名度は低いけど可能性のあるスマートコントラクトを発掘するインセンティブを与え、人気のあるスマートコントラクトだけしかステーキングを得られないという状況を防ぎます。
この時、先行者Nominatoにどれくらい多くの報酬が配分されるかはOperator側で設定ができるようです。このようにしてDApps開発者が有用なスマートコントラクトを開発するだけで、継続的に報酬を得られる開発者に優しい仕組みを用意しています。有用なスマートコントラクトが作られるようにインセンティブを用意することは、最終的にそれを利用するユーザーにとっても有益であると言えるでしょう。
レイヤー2ソリューションを標準実装
ブロックチェーンにおいてトランザクションの量が増え、トランザクション詰まりや承認手数料の高騰がおこることをスケーラビリティ問題と言います。
実例を挙げると、EthereumではDeFiなどが注目を浴びた事により取引量が急増し、一時期承認手数料であるガス代が高騰していたことが有名です。このスケーラビリティ問題を解決するための手段の1つとしてレイヤー2という技術があります。
レイヤー2とはメインとなるチェーン(レイヤー1)に接続できる2番目のチェーンのことを意味します。EthereumとMatic NetworkのPolygonの関係性を例にとると分かりやすいです。
この場合レイヤー1はEthereum、レイヤー2はPolygonです。Polygon関連のプロジェクトのトランザクションはすべてレイヤー2であるPolygonチェーン上のトランザクションとして記録されます。
ただこれだけではレイヤー2はレイヤー1と別のブロックチェーンを用意しただけになってしまいます。しかし、Polygonチェーン上で作られたブロックは256ブロックごとに、その情報を一括してEthereumチェーン上に記録されるようになっています。
このように別のチェーンで処理したトランザクションなのですが、Ethereumにもその履歴が記録されることによって、Ethereumによる耐改ざん性を利用することができるのです。もちろんレイヤー1から暗号資産をレイヤー2に移動し、何らかの取引を済ませてからレイヤー1に戻すということも可能です。
さらにPolygonチェーン上では独自にコンセンサスアルゴリズムが動いているため、取引手数料もEthereumのガス代とは関係なく安くなります。
もしPolygonが無ければ関連のプロジェクトのトランザクションはすべてイーサリアム上で記録されることになり、トランザクションの数がさらに膨れ上がりスケーラビリティ問題がより深刻になってしまいます。
このようにレイヤー2はレイヤー1と互換性を持ちながら、よりスケーラブルに取引を行うための仕組です。PolygonはMatic NetworkがEthereumと接続するレイヤー2ソリューションとして作り上げたものです。
レイヤー2のメリットは分かりましたが、この仕組みを採用したいと思ったときに、1からレイヤー2ソリューションを作るのは大変なコストがかかります。
しかし、Astar Networkではこのようなレイヤー2ソリューションがサポートされて、これもアプリ開発者にやさしい仕組みと言えます。
まとめ
Astar Networkは日本発のブロックチェーンプロジェクトというだけでも十分に注目される要素があります。
しかしそれだけではなく、Ethereumのようにスマートコントラクトを使用できること、さらにそれが開発者としても作りやすくなっていること、レイヤー2ソリューションが簡単に実装できるようになっていること、そしてこのプロジェクトがPolkadot接続を目指していることなど内容としても注目すべき要素が多いと言えます。
Stake TechnologiesはAstar Networkと別にShiden Networkというブロックチェーンの開発もしています。Shiden NetworkはPolkadotの実験的ネットワーク版であるKusama Networkのパラチェーン接続用に開発されたパブリックチェーンです。
このShiden NetworkがKusama Networkへの接続を2021年7月7日、世界で3番目に成功しました。今、成長がとまらないブロックチェーンの世界で多くの歴史が作られています。Astar Networkの動向はその中でも目が離せないプロジェクトの一つと言えるでしょう。
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