虹彩認証にブロックチェーンを組み合わせ、ヘルスケア領域における患者のデータを管理する臨床試験

様々なテクノロジーが普及した現代社会では、先進国と発展途上国の格差は拡大の一途を辿っている。
その証拠に、中東では難民や孤児を対象にした人身売買が未だに横行しており、今となっては国際問題にまで発展しているのである。
また、生活水準の低さから十分な健康状態を維持できず、病気になっても通院することができないといった状態となっている。

虹彩認証とブロックチェーンの組み合わせ

今回紹介するのは、アメリカのPatientory社とイギリスのIrisGuard社による、虹彩認証とブロックチェーンを組み合わせた次世代ソリューションである。
これは、虹彩バイオメトリック技術に対してPTOYNetと呼ばれるブロックチェーンを組み合わせることで、ヘルスケア領域におけるセキュリティ性能を強化するための仕組みである。

Patientoryは、HIPAAという厳しいセキュリティ要件に準拠した、ヘルスケア領域におけるセキュリティソリューションである。
Patientory協会によって管理されているPTOYNetと呼ばれるブロックチェーンネットワークおよび
PTOYトークンを活用することで、オンライン上で管理される医療情報を保護している。

IrisGuardは、イギリスで2001年に設立された、虹彩認識ソリューションを提供する大手サプライヤーである。
社会的な信頼性の高い人の認証要件を管理することを重視した、大規模なバイオメトリクスのプラットフォームを展開している。
創業以来、何億もの虹彩登録・処理に成功し、世界12ヶ国において、何兆にも及ぶ虹彩の相互比較を処理してきた。
IrisGuardのサービスは、ATMやスーパーマーケットのPOSレジ、マイクロファイナンス、医療援助、送金などの幅広い分野で実際に活用されている。

ヘルスケア領域における認証課題をブロックチェーンで解決

既にHIPAAをクリアしているPatientoryのサービスは、虹彩認証を利用することで、ブロックチェーンに新たな認証の仕組みを誕生させることを目指している。

一方の、IrisGuardの開発するEyePayと呼ばれるモバイル技術は、虹彩ベースの認証技術を活用しており、国連機関によって難民と孤児を人身売買から守るために使用されている。
EyePayは、3秒以内に患者の認証および承認を実行することができる。

このEyePayに対して、Patientory社のPTOYNetブロックチェーンを組み合わせることで、ヘルスケア領域を拡張していく計画を立てている。

Patientory社のCEOであるChrissa McFarlane氏は、今回のプロジェクトについて次のように述べている。

このテクノロジーでは、虹彩認証とデータの照合を瞬間的かつ正確に実行することができる。さらに、ブロックチェーンを活用することで、データのセキュリティを犠牲にする心配も払拭できるだろう。これにより、現代のヘルスケアが抱えるプライバシーと拡張性といった大きな課題を解消することができると考えている。

患者のプライバシー保護やデータ管理をブロックチェーンで実現

Pew Research Centerの公表している統計データによると、約20%の患者のデータが、様々な医療システム上で不一致な状態になっているという。
そのため、管理コストが増加するだけでなく、患者のプライバシーや安全性が損なわれる危険性があるのである。

ブロックチェーンを活用することで、病歴や処方箋といった患者のデータから、病院間のやり取り情報など、あらゆるデータの管理コストが削減され、効率も良くなると考えられる。

Patientory社によるEyaPayを活用した臨床試験は、製薬業界において初の試みとなる。
この取り組みに対して、IrisGuard社のCEOを務めるImad Malhas氏は、次のようにコメントしている。

EyePayを導入にした革新的なデバイスであるEyePay Phoneは、医療関係者(医師や病院、保険会社、薬局、政府など)同士がオンライン上で患者の電子医療記録(EMR)を共有する際に、プライバシーの保護性能を大幅に向上させることができる。ヘルスケア領域における認証プロセスの規模の大きさやプライバシーの重要性、およびデータの信憑性を担保するために、ブロックチェーンを活用した新たな仕組みが必要なのである。